長崎蒸男のサウナ道

サウナ後進国長崎での、サウナーの日記です。

【本棚】『怠惰の美徳』(著者:梅崎春生 中公文庫)

『怠惰の美徳』(著者:梅崎春生 中公文庫)

タイトルに惹かれ 購入した。

 著者の梅崎春生氏については存じ上げない。

怠惰の美徳 (中公文庫)

怠惰の美徳 (中公文庫)

 

直木賞作家であり、戦後派作家の代表格」ということであるが、「直木賞すげぇ」ということしかわからない。とりあえず文章は読みやすい。半世紀以上前の作品ではあるが、表現も面白いし、語り口も軽く、読んでいて小気味はよい。直木賞すげえ。

内容について

「戦時中、酒を一滴でも多く飲むために何をしていたのかという話」「ツクツクホーシの自然体っぷりを見習いたいという話」「釣り場における特殊なコミュニティの話」「わがままな猫を捨てに行く話」「酔っぱらって下宿の鴨居の溝に数万円を隠したことをすっかり忘れ引っ越した後に思い出して取り返しに行く話」等々、頭のいい怠け者から見た世の中が面白おかしく描かれている。戦中、戦後の社会風俗についても興味深い。

お気に入りの文

『やはり自然なのがいい。つくったり、たくらんだりしたのは、調子が好くない。』(P161「法師蝉に学ぶ」) 

これは小説、文章についての作者の意見である。大賛成である。

上辺だけを取り繕った、格好つけの、辻褄合わせの文章は、自分の書いたものはなおのこと、他人の書いたものでも何となくわかるようになった。「臭う」のである。臭くて文章が頭に入ってこない。きっと書き手も腑に落ちていない、気持ちや実感の入っていない文章だからだと思う。「くさいセリフ」とはよく言ったもんである。

蒸男が書いているのはたかだかブログであるが、それでも人に読んでもらう文章だ。書く上で肝に銘じておきたい言葉である。