【盲腸手術日記】手術から3日目【入院4日目】
3日目:相部屋の人々――人種のるつぼ
手術から3日目になると痛みもマシになってくる。腰の痛みはすっかり治まり、残るは腹の傷の痛みだけとなった。ただし、腹腔鏡手術とはいえ一応切腹しているわけだから、治まったとはいえ、痛みは結構なものである。
具体的に言えば、中学高校の部活で鬼のように腹筋運動をやらせれた翌日の筋肉痛に、包丁で盛大に指を切ったときの痛みをお腹に移動させて、それをミックスした感じである。
歩く速度は遅く、狙ってもいないのにロボットダンスのような動きになる。地味に辛いのがくしゃみである。「はっくしょん」の「は」あたりで、その際の痛みを想像し気絶したくなる。
こんな感じなので、皆さん、盲腸の手術をされた方に会ったら大いにいたわってあげてほしい。
とはいえ、手術も終わり、尿道カテーテルも抜いたので、ガスと便を出すこと以外、大きなイベントは残ってない。3食食って寝るだけだ。ある意味人生の楽園である。
この辺になると周りを見渡す余裕が出てきて、相部屋の方々のことが気になってくる。
定員4名の相部屋には蒸男のほかに2人いた。
ひとりは2か月以上入院している主のような爺さんである。基本的に静かにテレビを見ているだけなのだが、看護師さんへの態度が横柄で、不意にでかい屁をこく。この屁の音色が実にバラエティ豊かなのである。きっと、暇な入院生活で編み出した技術なのだろう。それを惜しげもなく披露してくるので、蒸男の腹筋は文字通り崩壊した。笑うと本当に痛いのだ。盲腸患者の相部屋の住人としては最悪の人物である。
もうひとりは中年の男性で、蒸男と同じ盲腸の方。蒸男より1日早く手術をしたようであった。ただ、蒸男と違い「散らしてから間をおいて手術」ではなく、どうやら緊急に開腹手術をしたらしい。蒸男よりも予後がだいぶ悪いようで、深夜も痛みと熱でうなされており、蒸男が退院する日も絶食状態で、退院は遠そうだった。彼を見ていると「腹腔鏡手術は本当に体の負担が少ないのだな」としみじみ思った。
ただ、それにしたって痛いもんは痛い。
みんな、それはわかってほしい。
それはさておき、爺さんが休みなく屁をこくため、このままでは腹の傷が開いてしまう。院内の休憩室へ避難するため、ロボット歩きで移動する。
その本棚にはこれまで退院された方が置いていった漫画や雑誌、小説がそれなりの数置いてあった。彼らの意志は継がねばなるまいと、次の2冊を読むことにする。
フードファイター喰いしん坊!ワイドSP 甲府武者修行編 (Gコミックス)
- 作者: 土山しげる
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2015/06/08
- メディア: コミック
- この商品を含むブログを見る
両方とも、今回の手術がなければ一生出会わないような作品である。
運命とは数奇なもので、しっかりはまってしまい、今後マンガ喫茶あるいは購入して読むことを決めた。